古野のブログ

“人マネジメントの素人”に何を期待していますか?

2018.11.14

大手エレクトロニクスメーカー・開発部門の課長向けワークショップを開催しました。
終了後、参加者の一人、A課長が近づいて来て、「僕は昔から人との付き合いが苦手で、エンジニアとして生きていこうと考え、『エンジニア』として魅力的な会社なので、ここに入ったんです。でも気がついたら、人マネジメントを期待される課長になり、部下とどう付き合えばいいのか日々悩んでいました。
今日のFFSのワークショップを受けて、すごく気が楽になりました。部下のデータに基づいてコミュニケーションを取ればいいんですね。とてもシステム的なので。明日からすぐに取り入れられそうです」

半年後、フィードバックのワークショップでAさんと再会しました。
私:「その後どうでした?」
Aさん:「部下の特性がわかり、会話の仕方も部下に合わせてシステム化したことで、とても上手く対話できるようになりました」
私:「それは良かったですね。人との対話って難しそうですが、とてもシステム的なんですよ」
Aさん:「その影響だと思いますが、人の反応や言動に敏感になり、興味を持てるように変わったのです。苦手意識が改善されたみたいで、いろんな人の因子を想像しながら対話を楽しんでいます」

FFS理論が導入されている大手メーカーでの活用ケースはほとんどが研究開発部門です。それは、もの創りの最前線を担うマネジャーが部下とのコミュニケーションで困っているからです。基本的に課長はプレーイングマネジャーです。技術者として評価されていて、その能力を発揮して欲しいと言われ、さらに「部下を動機づけてくれ」「育ててくれ」との期待です。しかし、全ての課長の中で人マネジメントに長けた人材がどれほどいるでしょうか?
これまで数千人の課長にお会いして来ました。ワークショップでの雑談や質問、アンケートのコメントから感覚的ではありますが伺い知れることは、『人マネジメントが出来る人だな』と感じられる比率は2~3割程度ではないかと思います。もちろん営業部門でも同様のことは言えます。売れる人が課長になります。ただ、営業職は日々〝顧客という人〟と対峙していますので、人マネジメントに長けた人がエンジニア職よりは相対的に多いです。しかし、全ての課長が部下マネジメントに長けている訳ではありません。
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 Web関連のベンチャー企業では、どうでしょうか?
成長スピードの早い業界であり、また組織拡大も早いです。年々人が増えていきますので、知らず知らずに部下がいる状態になります。創業者と一緒に立ち上げた創業メンバーも、最初はフラット組織で、技術や熱い想いを重視。そのうちに部長や執行役と肩書はつきますが、人マネジメントの経験は意外に浅いのです。また、成長段階に来ると入社2~3年の若手でも気が付けば数人から10名近くの部下を持ちます。さらに中途採用として入社する人も、採用基準は技術や経験。入社すると「新卒も育てて欲しい」とマネジャーになったりします。
ベンチャーや中堅中小企業も、大手と同様に課長職にいる人たちは「人マネジメント」に長けた人材でないのです。

そこで階層別の管理職研修に取り組みます。
ただ、この「管理職研修」、評判はすこぶる悪いですね。
一般論、概念論、労務的知識、また心構え等々、知らないより知っていた方が良いのですが、『今、目の前の部下との関わり方に悩んでいるのに、リアルなアドバイスや処方箋をもらえる訳ではない』のです。後に「そう言えば参加したことはある」と言われる程度の「思い出研修」と揶揄されているのです。

『当社は自律的人材育成がコンセプトだから、自分で考えてもらう』という考え方を否定するつもりはありません。素晴らしい意識だと思います。
でも、現場は疲弊している。
そもそも、最前線の課長は、「人マネジメント」の素人なんです。エンジニアや営業としてはプロフェッショナルでしょうし、教えるべき技術やノウハウも持っているでしょうが、〝教え方〟は素人なのです。動機付けやキャリア支援も、さらにストレス対策もド素人なのです。

素人に部下(大切な人)を預けているのですよ。
自律的に「人マネジメントの達人」になれる日まで待てますか?
そんなに余裕があるのですか?
素人に「管理職研修」という使えそうもない武器を与えて、あとのフォローはなし。遣りっ放し。「研修受けたよな。あとは頑張れ。何も支援しないけど」これが実態です。無責任極まりないのです。

人を大切にする企業なら、最前線の課長に使い易くて即効性があり、有効な武器を与えてあげましょうよ。その結果、「人に興味を持つ人たちが増え、人を活かす組織カルチャーが形成されていく」のです。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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