古野のブログ

パワハラって本当に?

2017.11.16

最近立て続けに「パワハラ」に関する相談を受けました。
上司からも周囲からも評価されている人材ですが、部下が「パワハラじゃないですか」と人事部門に相談したそうです。

さて、紙面を騒がせるように「罵倒する人」もいます。ただ、それは〝人として問題がある〟のであり、少なくともある程度の規模の組織で評価されてマネジャーになった人たちの中に、〝そんな人〟はほとんどいません。もし、いるとすれば、それは能力や人となりという基準ではなく、年齢や年次で昇格させてしまう運用と組織風土に問題があるだけです。今回のテーマとは切り離します。

相談をしてきたメーカーの人事の方も「部下を虐めてやろうと思って会社に来ているマネジャーなんていない」とコメントしています。さまに同感です。
では、善良なはずの人が、なぜ「パワハラ」と指摘されるのか? その要因について考えてみましょう。

相談を受けたとき、必ず、上司と部下のFFSデータをもらいます。
そこで、合点がいくのは、やはり個性の違いによるズレでした。
FFS理論では、強みが発揮されていない時に、発揮しようと過剰な状態となり、その言動は相手から見るとネガティブに感じられるのです。個性として、つい陥ってしまう癖みたいなものです。〝ディストレスな状態〟とも言えるのです。

上司側はA(凝縮性)ないしD(拡散性)、C(弁別性)という因子が重なっていました。部下はE(保全性)かB(受容性)でした。

そこで、上司側の3つの因子を整理してみました。日頃の言動でネガティブに映る傾向を抜き出しています。
凝縮性は、やるのが当然だろうと「押し付けがましい」。最後は、「つべこべ言わず、やれよ」と指示してしまう(独善的、支配的に見える)
拡散性は、自由にやらせるので、丸投げに見える(無茶振り)。ただ自分の思い通りにならないと「もういいよ。俺がやるから」と切れてしまったり(人の気持ちに無頓着)、「なぜ出来ないんだ」と攻撃的になる
弁別性は、理由が必要なので、「それはなぜ」「それは意味あるの」「無駄じゃないの」と突っ込む。最後は機械的に淡々と処理する(無視された感じ)

本人たちに確認しても、「えっ、そうなんですか」とほぼ意外そうな反応です。そんな気もなく、嫌味もなさそうです。
ちなみに、私自身はこの3つの因子で構成されているので、自己弁護と思われるかもしれませんが、悪気はなくてもついついしてしまうので、上司の皆さんと同じ気持ちになってしまいます。
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一方、訴えている部下側の特徴も共通しているのです。
「みんなと仲良く平穏でいたい」「きちんとやりたい」「認めて欲しい」と思っている人たちです。そもそも受容性と保全性の高い人々は争いを嫌う傾向にあります。
そのため上記の言動は、「自分の存在や仕事ぶりが否定されている」と感じたのでしょう。
上司-部下の関係で、否応なしにポジジョンパワーが効く訳ですから、あのような言動は、パワハラと感じさせるのかもしれません。

上記3つの因子を上位三因子で3つ共持っている人材の出現率はなんと1.33%なんです。百人中一人強ということになります。凝縮性だけに注目して第一因子である人の出現率は2.6%です。
つまり、かなり限られた人材なのです。
ただ、個性的な話だと昔から同じような出現率で生息していたとすれば、なぜ最近急にこの人材が絡むパワハラ問題が増えたのでしょうか?

それは部下側に要因がありそうです。
ここ数年入社している人材の平均値を分析しています。すると凝縮性と受容性の比較において凝縮性が低くなり、受容性が高くなる傾向にあります。
所謂「ゆとり世代」からの現象です。子供の時代に親や教師から「叱られた経験がない」というのが特徴で、ネット世代として「嫌いな人とは付き合わないで済ませられた」という希薄な人間関係の中で育った特徴もあるようです。
数年前、ある企業の新人研修で「それは違うだろう」と指摘すると、急に泣き出した23歳の男性がいました。「えっ、なぜ泣く必要があるか」と尋ねると、人生で初めて「怒られた」と説明してくれました。「これは指摘であって、怒ってはいない。ところで、『怒る』と『叱る』と『指摘』の違いは分かる?」と聞いても「わからない」ようなのです。
「伸びて欲しいから指摘する」という親心としての接し方が、濃い人間関係において慣れていないため、『相手の真意を確かめる術を知らないまま情動的な反応』をしているのではないかと考えられるのです。

 濃い人間関係に慣れる、ということもそうですが、違う個性に慣れること(ついやってしまう癖がネガティブに見えるが、他意はない)で、このような勘違い〝パワハラ問題〟は未然に防ぐことは出来るのです。
同時に上司向けにも、自分の言動が、違う個性の人には、「こんな影響を与えてしまう」ことを理解させることも必要でしょうね。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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