古野のブログ
機能する経営チームを作ろう
2017.08.21
最近、立て続けにベンチャー企業の経営チームを分析しました。「いろいろあるね」というのが正直な話です。
これまで200社を超える創業ベンチャーの経営チームを診断し、支援し、経過を見てきました。上場がゴールではありませんが、少なくとも、この〝通過点〟を通れたのは、診断した中で約70社36%でした。その共通点は、経営チームの関係性が良かったことです。
創業者の個性の特徴を一つ挙げるとすれば、それは日本人平均で特徴づけられる「慎重で改善、仕組化が得意」な保全性に対して、拡散性因子が高いということです。
出現率で言えば日本人平均では拡散性35%、保全性65%(両因子だけの比較)に対して、創業者では拡散性80%保全性20%だったのです。
FFS理論で一人ひとりに言及すれば、因子順や差分を診断しますので、人それぞれ千差万別です。ただ、創業者としての共通点をマクロ的に捉えれば、かなり共通性を持っていると言えるのです(受容性、拡散性の二つの因子が相対的に高い創業者は55%になる)。
ただ、似ているからと言って全員が全員上場している訳ではありません。上場した会社と、していない会社がありました。
ではその違いは何だったのか。
実は、経営チームの関係性で『補完関係が成り立っていたこと』なのです。
創業者を特徴づける拡散性は、「天邪鬼で、人がやらないことに興味を持ち、準備なくてもやろうとする気質の持ち主」です。変革推進していくことが得意となりますが、「気分屋」「飽きっぽい」という、長期的に経営していくには向かない側面もあるのです。
従って、その発想や推進力を損なわず、事業として立ち上げ、刈り取っていける仕組み化が必要になります。さらに組織として永続的に成長させていくためにメンテナンスや人材育成等々も必要でしょう。創業者にしてみれば、〝邪魔臭い〟ことなのです。
従って、経営チームには、創業者が持ちえない強みを持った人材が必要になります。推進力には、それに見合うブレーキも必要です。計画を作ったり仕組み化出来るナビゲーターのような人材も必要でしょう。
つまり、個々の持ち味が尖がっていながら、それぞれが補えるメカニズムがあることが重要になるのです。
また、会社として重要なのが意思決定です。創業時は独断でも構いませんが(その方が良い)、ある程度、顧客や社員、関係者が増えてくると、独断だけでは精度の高い意思決定を担保するのは難しくなります。そのため様々な角度から検討をおこない、より精度の高い意思決定をしていくために、補い合うことが求められるのです。
肩書きで採用しては駄目
ある会社でのことです。
創業者が何かの会合で知り合ったらしく〝ある人〟を連れて来たのです。そして、突然に「副社長になってもらうつもりだ」と、言い出しました。
人事担当役員は、突然のことで慌てて、リファレンスをとりました。
その結果は「芳しくない」ものでした。
役員会に報告して、見直しを迫っても「どうしても採用したい」と創業者は譲りません。「責任は俺が取るから」と言ったので、役員たちは駄目出し出来ませんでした。
採用後、半年も経たずに、自ら退任するという申し出があったのです。
〝隣の芝生〟じゃないですが、自分たちよりも「メジャーな会社で役員をしていた」という肩書、人脈、スキルや経験は、目が行くようです。
この手の話はたくさんあって、私が見てきた限られた事例でも、ほとんどが失敗しています。
そもそも、本当に活躍していれば「出て来ない」という当たり前のことが、なぜ「彼、彼女は別」となるのでしょうか?
長年ベンチャーへ投資をしてきたVCとのミーティングでも、経営者は『創業から支えてきた部下よりも、キラキラな肩書きの外部の人を重宝する』とか『突然、重要な役割の人材が辞める』とか等々「ベンチャーあるある」の本が書けるくらいネタありますよ、と笑っていました。
まとめてみましょう。
本当に機能する経営チームを作りたいなら、現状のチーム力を把握し、今後の成長ステージを意識して、どんな機能が足りないかを見定め、それを人材の強みに置き換えてから人選し、最後に補完する関係性を見ることでしょう。
これが成功し続けられる秘訣なのです。