ナナメヨミ

チームの動きをシミュレーションでそれっぽく表してみたい!!

2019.01.11

シミュレーションでチームを表現してみたい

組織や人事に関わっていると、組織の状態をどうにか言い表そうという努力をすることになる。言葉による説明をたくさんすればするほど、当然そこには誤解が生じる。逆に少ないロジックで全部説明しようとすれば、現実を捉えきれずに理解が進まない場合もある。

とはいえ、個人的にはチーム分析を言葉だけで説明することにいいかげん疲れてきたので、言葉で説明する以外の可能性も探ってみたい。単純なロジックから複雑なチームの動きをビジュアルで表現できたらかっこいいだろうということで、試しにやってみようと思う。

 

自然界で、単純な動きや約束事の集合が集団の動きに見えることがある。鳥が群れをなして飛ぶという動きは、鳥同士が都度複雑な調整を行っている訳ではないのだが、集団の動きとしては秩序だった行動をしているようで、見ていて美しく感じる場合もある。

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(こんなイメージ・・・)

そういった鳥の群れの動きを表現するシミュレーションとしてboidシミュレーションというものがある。基本的な3つのルールで、鳥の群れの動きを表現できるシミュレーションである。

参考:boid_102 : Built with Processing

一般的なboidシミュレーションでは、個々のエージェント(群れの中の一羽)がとる行動選択はランダムで設定することで自然な動きを生み出せる。今回、FFSの5因子データを使って、個別のエージェントに個性を持たせてみたらどうなるかを考えてみた。つまり、個々の行動選択が個性データによって異なれば、集団全体の動きにも差が付くということになる。

また、FFSデータが異なる集団同士の『動きの質の差』を検討するため、チームが問題解決をするような要素も入れてみた。今シミュレーションでは『ランダムに配置された島を、決められた空間内を自由に飛び回ることで早く見つけることができるか?』というような問題設定である。

シミュレーションの条件

シミュレーションの流れは以下の通りである

  1. ある領域を設定する(空間)
  2. その領域内にランダムに回答となる領域(島)を設定する
  3. 空間内に個性(FFSの5因子)を持ったエージェントを配置する
  4. エージェントは単位時間の間に因子を発生させる
  5. 確率的に発生した因子によってエージェントの行動決定を行う
  6. 各エージェントがステップごとに行動することによって集団が、領域内を探索する
  7. 探索の結果、集団内の誰かが島にたどり着ければ、その時点でシミュレーションを止める
  8. ある一定時間探索をしても島にたどり着かない場合にもシミュレーションを止める

各因子に基づいた行動基準(行動ルール)を説明すると以下の通りになる。

凝縮性:規範性:集団の中心に向かう
受容性:柔軟性:周りに合わせたスピードで動く
弁別性:合理性:他の動きの中のバランス
拡散性:創造性:ランダムに動く
保全性:継続性:仲間と適度な距離を保つ

分析の条件

同じデータ10名で構成される、4チームについてデータ取得を行った。比較は回答領域への到達率と到達までのステップを比較する。
ステップ数1,500というのが今回シミュレーションを止める基準(未到達)としてある。

分析結果

シミュレーションの画像は以下のような形になる

AD同質のチーム

BE同質のチーム

一応の結果として、4パターンの同質チーム(同じデータで10名のチーム)で平均のステップ数、到達率などを出してみると以下のようになる。

AD同質

BD同質

AE同質

BE同質

到達までの平均のステップ数

690.7

825.7

930.6

1001.9

到達率

88.3

79.3

70.0

61.3

AD同質の到達率が最も高く、BE同質が最も低いということになる。

考察

今回の条件であれば、結果を聞く前にわかってしまう人もいただろう。つまり、『エージェントが多く動くチームのほうが良い結果につながりやすい』ということになる。当然、この結果からAD同質チームは優秀である』と結論づけるのは間違いで、正しくは『AD同質が派手に動くように行動ルールを設定してあるので結果もよく見える』ということである。もう少しいえば、『凝縮性の行動ルールのほうが受容性の行動ルールよりも多く動く設定になっている』ということになる。

 

因子と動きをつなげる行動ルールについては色々試してみたが、今のところ、『見栄え的に現時点で納得できそうなもの』、という程度の設定である。この辺りを帰納的に詰めるか、演繹的に詰めるかというのも判断の分かれるところだし、今後のやる気と能力次第ということになる(いや、現時点でかなり限界・・・)。

さらに、経験や学習の要素も入れる必要があるだろう。今回の設定では正解率=運良く島にたどり着く率ということになる。『島に近づいたことがエージェントにフィードバックされる』、『その情報に基づいて方向を変えられる』などという条件を入れれば結果は違ってくるし、フィードバック情報をどのように扱うかも因子ごとに設定できるだろう。

『情報』という意味では、メンバー間の情報交換についてももっと条件設定がなされる必要もあるだろう。エージェント同士が話し合うことで、集団が動きを変えるといったことも考える必要がありそうだ。

 

・・・・などなど、色々考えられるところではあるとは思いますが、FFS理論を使うことの一つの可能性として、こんなものもを提示してみました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

コラム筆者プロフィール

大宮 昌治(おおみや・しょうじ)

筑波大学大学院理工学研究科卒
大手重電機メーカーで水処理プラント営業に従事
2003年 日本大学グローバルビジネス研究科(MBA)修了
2004年2月 株式会社インタービジョン(現:株式会社ヒューマンロジック研究所)
現在 株式会社ヒューマンロジック研究所 アナリスト(現在、組織分析、チーム設計等を担当)
理系大学院を出て、大手重電機メーカーに就職。新卒で何の関係もない営業に配属されたことで、『人事っていうのはどういうつもりで意志決定をしているん だ?』という疑問から人事コンサルに。
ガンダム、エヴァ世代、マンガも小説も群像劇が好き。特技は合気道。
複雑系や、エージェントベースシミュレーションなどに興味があり、それを応用した人事ソリューションを考えたいと思っている。

A 5  B 15  C 14  D 8  E 10

柔軟に物事を受け入れ、白黒とデジタルに判断することを得意とする。アナリスト型。

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