古野のブログ
これこそ、働き方改革です
2017.07.18
「セムラーイズム」(リカルド・セムラー著 新潮社刊)を読んだのは、十数年前になります。
「理想的な組織だなぁ」と感心し、その経営者に一度会ってみたいと本気で思いを馳せていました。知り合いの経営者は、過去に同じ思いを持たれて、ブラジルまで訪問したそうでした。
つい先日、ある団体が招聘して初来日の記念講演会が開催されました。念願のお会いすることが出来ました。講演を間近で聞いただけですが。
正直言えば、講演会の進行に不満があり、会自体は全然面白くなかったのですが、セムラーさんの人柄を垣間見えたので、ある程度得ることはありました。
それは、組織創り、経営方針は、セムラーさんの個性が投影しているなぁ、ということです。
「セムラーイズム」はほぼ自伝です。ご自身の学生時代のエピソードから、二代目として会社を引き継ぐやりとり、引き継いですぐに倒産の危機を迎え飛び回る日々、その多忙さ故に体調を崩し倒れる体験から、会社を変えていこうとするプロセスまでが詳しく書かれています。読んでいて、セムラーさんの考え方や発想の背景にある特性が垣間見えてきます。
・無駄なことはしたくない
・合理的な運営
・変革していくのは当たり前=変えていかないと生き残れない
・簡潔でわかりやすくする 等々
私自身FFS理論の仕事をしている関係もあり、どうしてもその人の個性に着目してしまうことが癖になっているからでしょうが…。弁別性が高く、拡散性も高い。こんな人物像でした。
その結果、社員一人ひとりが自律的に働くようになった会社の紹介をしているのが「奇跡の経営」(リカルド・セムラー著 総合法令刊)です。サブタイトルが「一週間毎日が週末発想のススメ」というものです(こちらの本は結果にフォーカスしているので、その背景が伝わらない)
セムラーさんが目指した取り組みは、端的に言えば、「人間性の尊重」でしょう。働いている人たちは大人です。大人として扱いましょう、ということなのです。人は皆自分で居心地良くするから、それを発揮してもらうためには〝管理しない〟というものです。
・時間管理しない。フレックス制で、タイムカードがない
・採用は働く現場の社員がみんなで決める
・上司は部下からの評価で決まる
・報酬は自分たちで決める
・経営参画(工場の撤退や、新設も自分たちの投票で決める) 等々
その結果、外的な経営環境が厳しかったにも関わらず、その荒波を乗り越え、成長し続けたという事実なんです。
素晴らしい経営者であり、理想的な組織であると感心させられました。また、同時にこれこそが『働き方改革』なんだと、しみじみと思ったのです。
今の政府が取り組んでいるのは、「残業時間は何々にしましょう」「最終金曜日を早く帰るようにしましょう」と、『働かせ方の管理強化』だけにしか思えません。働く側に視点を置いてみれば、全く働き方改革じゃない。自立的・自律的じゃないんですよね。
もし、本気で働き方改革に取り組みたいなら、「セムラーイズム」をきちんと読んでみてはいかがでしょうか?
さて、冒頭の話に戻します。憧れの経営者に会ってみて初めて分かったことは「いい書籍は、それを読めば十分わかる」ことであり、著者に会わなくても良かったということです。