古野のブログ
本気で人を活かしたいなら、未来シミュレーションしよう
2016.12.07
今、人事部門の取り組みとして一番進んでいる株式会社セプテーニ・ホールディングスから相談がありました。
https://www.septeni-holdings.co.jp/csr/activity/hr.html
さて、相談内容は「評価の安定しないマネージャーのパフォーマンスを安定させたい」と言うことでした。
彼らは創業期の早々から仲間が評価する「評判評価」を取り入れています。その評判評価は、個々のパフォーマンスや育成とかなり相関があり、そのデータを基にして、配置や育成に活用しています。その評価はマネージャー登用、パフォーマンス把握の際の重要指標として用いられており、パフォーマンスが安定しないマネージャーが誰かということを定量的に把握した上で、「なんとか安定させてあげたい」と相談に来られたのです。
そこで、パフォーマンスが安定しない要因をいくつか整理してみました。
我々は、「適材適所」を科学的にアプローチするという会社です。
従って
① そもそも個人の問題=向き不向き(思考行動特性)の問題なのか
② 個人と仕事=業務に求められる能力との合致度合いの問題か
③ 個人と人間関係=チームメンバーの関係性の問題か
でアプローチします
① の場合、マネージャーへの昇格判断に原因があると考えられます。
つまり、プレーヤーの時にはかなりの成果を出せていて、マネージャーになった途端に安定しなくなるのであれば、「マネージャーとしては教育が必要」だと判断できます。過去の評価を時系列で追いかけていくと明確になってきました。
逆に「なぜ、この人を昇格させたのか」ということへの着眼も必要に思えます。ただ、営業のように明らかに数字を出した人を処遇する上では、「昇格させることが当たり前」となっているのです。セプテーニ社もその点では普通の会社だったようですが、素晴らしいのは、データに基づき、マネージャーに適した人を〝見極める基準を作りたい〟と、データの仮説・検証に注力していることです。
余談ですが、成績優秀者を昇格させることは、珍しいことではありません。特に営業系の会社で見受けられる現象です。
この件に関して、自動車ディーラーと不動産仲介の会社ではほぼ同じ内容のことを言っていました。「一度マネージャーをやらせて、駄目だったらすぐにプレーヤーに戻す。この世界は売れる人が一番なので、本人も周囲も誰も文句は言わない。ただ、一度やらせてみないと向き不向きは判らないから」と。保険会社では、昇格を打診すると断る社員がいます。それは営業インセンティブが大きいため、マネージャーになると「報酬が減るから」という理由なのです。
ただ、一般的な企業では、「降格制度がない」もしくは「制度はあっても降格をさせない」のです。これは、昇格させたのは誰? という責任の所在を追及しないで済むことになるからです。しかし、最近の人事部門の関心事の上位に「中間管理職の能力向上」が入っているのです。原因も追究せずに、「階層別研修」でお茶を濁しているのです。
現場は〝出来ないマネージャー〟の温床となり、部下にあたる人たちのやる気を削いでいることに、人事部門は「問題だ」と言いつつも、本気にはなっていないようです。
では、②か③なのかは、どうすればわかるでしょう。①のように時系列の評価だけでは特定できません。そこで必要になってくるのが、業務との合致度合い、メンバーとの関係性の評価です。セプテーニ社が優れた会社と我々が評価しているのは、独自に考えられた『人材育成方程式』が基本にあり、その数字を基に人事運営しているからです。
この方程式を紹介すると
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G = P × E (T + W)
(Growth) (Personality) (Environment) (Team)(Work)
成長 = 個性 × 環境 (チーム + 仕事)
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つまり、個人の特性だけでなく、仕事との合致度、メンバーとの関係性を計算式に入れて、本人の成果と相関が取れるのかを常に検証しています。今では、誰々をどこに異動すると「どんな評価結果に変るか」まで、シミュレーションできるようなっているのです。(※そのシミュレーション数値は、実際に異動した後まで検証しているため、かなり精度が高い)
そのため、②か③が原因であれば、別の部門やチームに異動した場合、評価がどう変化するか〝シミュレーション〟が出来るのです。
相談に来られた際に、このシミュレーション表を見せていただきました。
もう驚きしかありませんでした。『ハラショー』と思わず叫んだくらいです。我々に相談するまでもなく既に「出来ている」のです
その人の個性と、異動先の業務との合致度、異動先のメンバーとの人間関係まで数値化していますので、現状の組織での評価から何ポイント上がるか、下がるかと計算できるのです。もちろん受け入れる組織にも事情がありますから、一つではなく数部門の候補と、評価数値を出していきます。その中で受け入れ可能性もあり、評価が向上する先を見つけるのです。
「現場の一人ひとりを活かそう」と本気で考えて実行している人事部門の心意気が見えてきます。
これが一番〝進化した人事部門の在り方〟ではないでしょうか?
管理することが当たり前となり、『人事権という権力』を、あたかも持っていると錯覚し、その既得権を守り続けようとする〝旧来型の人事部門〟。企業の現場から見ると、必要のない管理部門か、役立たずの管理部門に成り下がっているのです。