古野のブログ
人事は技術じゃない
2016.07.12
「HRテクノロジー大賞」なんて案内が来ました
つい違和感を感じてしまったのは僕だけでしょうか?
その根底にあるのは、「人事は技術じゃない」ということです。
事業会社において「人を活かす」ということは事業を続けていくために欠くべからざることです。技術があれば、上手くいくなんて幻想です。
日々、社員と接し、語り合い、相談を受けたら瞬時にアドバイスをして、その後の経過を観察したり、会議に出て裏付けを取ったり等々。オフィスの椅子に座っている間もなく、現場を駆け回り続けて、経営トップや事業部のトップが悩んでいる「人と事業」(あいつで大丈夫か? 誰が適任なんだ?)に関する意思決定に、的確な情報を提供したり、場合により起案することが〝本当の人事〟の仕事なのです。
もちろん、技術進歩により、コミュニケーションの取り方や観察の仕方、メモの仕方は進化するでしょう。ただ、それは人事に関わるものではなく一般的進化であり、それを利用すればいいだけなのです。
何が一番重要かと言えば、「人と事業に寄り添う」という哲学的なことではないでしょうか。
同様な問題として、「タレントマネジメント」も言葉だけが先行しています。概念的に捉えれば、これまで多くの会社が取り組もうとしていた戦略人事となんら変わらないレベルです。しかし、人事システム関連の会社が従来のシステムに「タレントマネジメント・システム」というサブタイトルを少し飾りつけた程度で、〝あたかも凄いツール〟〝これがないとタレマネが出来ない〟と誇大広告級で商売しています。
買う方がいるので、商売になっているのでしょうが、「買う方ももっと考えたらいいのにね~」と思います。
つまり、システムにすれば、便利という意味では便利かもしれませんが、タレントマネジメントは「どう人を活かすのか」という前提の議論、方向性がなければ、ただ単にデータを集めただけでは、何も駆動しないのです。
先日も、相談がありました。「データを入れる箱は出来たけど、何を入れればいいのか議論していなかった」ということです。官公庁がよくやっていた『箱主義』となんら変わらないのです。
前述しましたが、日々現場で社員と寄り添うのが人事の仕事。その活動があって初めて様々な情報が集まるのです。「事業で成果を出す」「次の本部長(部長)の候補を探す」「他部門に出た方がいい人材をサーチする」等の目的が明確なので、集まった情報は的確に活用されるのです。その活動に人事を駆り立てるものは何か?
それこそが、人事としてのあるべき姿を考える=つまり「哲学」ではないでしょうか?
しかし、人事関連の情報提供をビジネスとして展開されてきた会社が「的外れ」なアワードを設けたのはなぜなんでしょうね。
彼らは本気で人事部門を変えたいと思っていないのかもしれませんね。
技術ではなく、哲学か? ということで、「HRフィロソフィー」があるかを問うて、表彰していくのが、あるべき姿ではないかと思ったのでした。