古野のブログ

一人ひとりに個性があることを理解しないと、間違うよ

2016.06.29

先日、散歩でウインドショッピング(冷やかし)をしていて、面白いものを見つけたので手に取ったところ、店員が近づいて来て「これ、今売れています。人気なんですよ」と教えてくれました。私の個性は〝人と同じものを持ちたくない〟という個性なので、その言葉を聞いた途端に興味を失いました。
でも多くの人は「売れている」「人気だ」という言葉に「安心感」を感じるため、セールストークとして〝鉄板〟のフレーズなんです。
しかし、その鉄板セールストークに合わない人もいるのです。一人ひとりに個性があり、それぞれ違う思考行動のパターンを持っていて日々動いているという事実を知らないと、とんでもない間違いを起こしているのです。

個性って何んなのでしょうか

「行列の出来るお店」もそうです。並んでいると並びたくなる。「皆が選ぶものは良いはず」「話題に乗り遅れたくない」と言う心理です。また、ワゴンセールに殺到するのは「損したくない」という心理です。
ただ、行列には並ばない人。話題に興味を示さない人、損よりも得したいと考えている人等々。全てが同じような心理で動くのではないのです。
これらの考えたり、行動する差異を生み出すのが個性=個別的特性なのです。

例えば、今流行りのビッグデータでは、膨大な量の分析をしているようですが、個性を前提に考える我々からすると、「無駄な事をしているな」と思うしかないことが多々あるのです。
以前、大手の総研からこんな相談がありました。
コールセンターからの依頼でトラブルの原因追求と対策をマニュアル化するために、その総研はテキストマイニングに取り組みました。録音した会話を全てテキストにして、例えば「どんなやりとりが顧客を不満にさせるのか/信頼を得るのか」と重要なキーワードやパターン、法則性を抽出しようとしていたのです。まさにビッグデータの時代になり可能となった業務です。
ある程度構築出来た時に、想定外のことが起こり、法則性が見えなくなったというのです。それは、ほぼ仕上がったマニュアルに則りオペレーターが対応していた時のこと、突然電話の向こうの顧客が怒り出したのです。
マニュアル通りに「返金いたします」とオペレーターが応えると、「なにぃ、俺はお金が欲しくてクレームを言っている訳ではない。失礼な」と。
ある程度構築してきた仮説が崩れる瞬間だったのです。

7cd44411828f4c6efc823ec08ecd9628_s1これ、凝縮性の高い人ですね。おそらく商品が好きで、正義として〝ただして欲しい〟からクレームをしたのでしょう。その場合は、返金ではなく、「きちんとお礼を述べて、おっしゃる通りに正します」という返事が良かったのです。
凝縮性の高い人は、本当に気に入ると『ロイヤルカスタマー』となり、永続的にその商品やサービス、その会社を贔屓にします。そのため、少しでも対応や状態がおかしいと感じると「これは駄目だよ」と好意として指摘するのです。
このようなやりとりは顧客が「商品やサービスを育てる」という位置づけとなります。まさにロイヤルカスタマーなんですよね。それを個性が関係としているということを考慮せず、まだ大量のデータを基に一般消費者の動向だけで処理しようとするから、怒らせてしまったのです。

同様のことは、消費行動分析であったり、感情を研究する学会であったり、さらに面接の仕方やコーチング等々、皆個性があるということを理解していても漠然としていて、本気で個性が影響を与えた結果まで踏み込んで研究していないのです。

先日も、大手企業の人材開発部門でキャリアコーチングを担当している方と雑談をしていると「保全性の高い人とのキャリア面談は、相手が話始めるまで時間はかかりますので待つしかないですからね」と言うと「えっ、そうなんですか? なかなか話をしてくれないので、会話のない時間がバツ悪く感じて、ついこちらから話を始めます」とのことでした。
「バツ悪いと感じるのは、相手も同じ。いや個性的には、もっと強く感じるのが保全性です。だから、待っていれば自分から話を始めます。数分、長い人だと10分程度は沈黙していることも稀ですがありますよ」と伝えました。
「えー、そうなんだ。そんなことは、キャリアコーチングの講義では教えてくれなかった」と。

つまり、人にはそれぞれ違う思考・行動パターンがあり、それが影響した感情的行動や「好き・嫌い/快・不快」という情動反応で動いているのです。
従って、そのことを理解すれば、少ないデータでも十分に分析し、予測することができるのです。しかし、「人には個性がある」とはわかっているつもりでも、そこまで影響をしていると思っていないので、大量のデータを集めて分析しようとするのです。
例えば、個性の違いで「皆が評価するものが欲しい」という人たちと「皆が評価するものは持ちたくない」という人たちがいますので、法則にならない。だから、法則が見えるまで大量のデータを集めて分析をすることになります。逆に数を集めすぎるとより一般化するので、「売れているものは、安くて品質が良かった」なんて。
つまり、個性以前の〝そもそも人は、何々するよな〟と極めて当たり前の結果を導いていることもあるのです。

個性が日常的な行動に影響を及ぼします。何を買うか、食べるか、予定の入れ方、そもそも仕事の進め方、さらに一番大事な意思決定(決められないという個性もあります)まで影響をしているのです。

大量のデータ分析もデータアナリストも否定はしませんが、お金をかければいいというものではありません。個性があるということを理解することで、少ない数のデータで十分に法則や相関を見ることができるのです。
そのため、人には個性があり、それを前提にして法則性を考えないと、無駄も多く、適切な対応策に到達しないことを肝に銘じていきましょう。

ただ、一つ申しあげておくと、テレビのバラエティー番組等でコメンテーターとして登場した心理学者が「あるシーンで何を順番に取りますか?とかの質問に答えると、「この人は顕示欲が強い人」なんて…。よく言いますよね。そんなものは、占いに等しいのです。たった一つの回答だけで性格特性がわかるなんて、まさに文学の世界なんです。ちなみに日本の心理学は概ね文学部にあるので、科学ではなく文学的解釈の世界なのです。

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役

古野 俊幸(ふるの・としゆき)

関西大学経済学部卒。
新聞社、フリーのジャーナリストなどを経て、1994年、FFS理論を活用した最適組織編成・開発支援のコンサルティング会社・CDIヒューマンロジックを設立。
CDIヒューマンロジックのホールディングカンパニーとして、1997年に株式会社イン タービジョンを設立し取締役に就任。2004年4月からインタービジョンの代表取締役に就任。その後、社名変更を経て、現職。
現在まで約600社以上の組織・人材の活性化支援をおこなっている。チーム分析及びチーム編成に携わったのは,40万人、約60,000チームであり、チームビルディング、チーム編成の第一人者である。

A 16  B 9  C 14  D 17  E 3 / DAC

使命感、決断力をもって、有事に変革を推し進めることを得意とする。組織先導型。

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